フェリチンが増加、減少する原因

検査

基準値:男性30~300ng/mL 女性10~120ng/mL ※基準値は施設によって異なる
目的:貯蔵鉄の把握、炎症性サイトカイン作用の推測

フェリチンとは、アポフェリチンという蛋白質とFe3+が結合した水溶性蛋白質である。
余剰の鉄は、このフェリチンに貯蔵される。フェリチンの一部は細胞内で変性をうけてヘモジデリンとなる。

鉄が不足の状態になると、可溶性のフェリチンから鉄が離れ、再びトランスフェリチンによって血中で運ばれる。一方、鉄が過剰に蓄積すると鉄過剰症となる。

フェリチンは一定の割合で血中に溶けだし、血清フェリチンとして測定される。血清フェリチンは、体内の貯蔵鉄量を敏感に反映するので、鉄欠乏の検査マーカーとして用いられる。しかし、悪性腫瘍、肝障害、心筋梗塞、感染症などでは、貯蔵鉄量とは無関係に上昇する。これは組織破壊に伴う血中への逸脱などが原因と考えられている

癌では進行に伴い増加し、経過観察、治療の効果判定、再発のモニターに用いられている。

男性では年齢による変化はなく、その値は女性の2から3倍である。
女性では若年層で低く、閉経後に男性の値に近づく。

薬剤(鉄剤)投与、輸血の影響を受けるので、病歴を正確に聴取することが必要である。
フェリチンが異常を示し、血清鉄などの検査が正常の場合、悪性疾患が否定できないため、精査を進める必要がある。

フェリチン値 考えられる病態・疾患
減少 基準値下限以下 [高頻度]鉄欠乏性貧血, 潜在性鉄欠乏(妊娠, 月経, 成長, 鉄摂取量低下など)
[可能性]Huntingon病
増加 基準値上限以上

[高頻度]急性白血病, 慢性骨髄性白血病の急性転化, 悪性リンパ腫, 多発性骨髄腫, 成人still病, 血球貪食症候群, 細網肉腫, 原発性肝癌, 転移性肝癌, 膵癌, 肺癌, 乳癌, ヘモクロマトーシス, ヘモジデローシス, 再生不良性貧血, 無効造血, 慢性炎症性疾患に伴う貧血, 膵炎, 肝炎, 心筋梗塞
[可能性]胃癌, 大腸癌

参考文献
異常値の出るメカニズム
臨床検査データ
診断に自信がつく検査値の読み方教えます

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