血行動態によって除細動と薬物治療を使い分ける
周術期の不整脈で圧倒的に多いのは心房細動(Af)で、データによって0.37%~30%にも上ると言われている。1)
血行動態が不安定(低血圧、肺うっ血、心筋梗塞など)であれば、除細動。
血行動態が安定していれば、β遮断薬、非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ベラパミル, ジルチアゼム)でレートコントロール。心拍数<100~110bpmを目標に。
β遮断薬の方がCa拮抗薬よりも洞性リズムに戻る可能性が高いとする文献もある 2)
β遮断薬
オノアクト®(ランジオール)
ブレビブロック®(エスモロール)
作用機序は、洞房結節を抑制して心拍数を下げる。交感神経刺激作用の減弱により陰性変力作用、陰性変時作用があり、心収縮力を下げることで、1回拍出量と心拍出量を低下させる。
ランジオールもエスモロールも臨床的な効果に差はない。数分で効果が出現し、10~20分で効果が消失する。血液中と肝臓のエステラーゼで速やかに代謝されるため、肝機能低下、腎機能低下例でも使用可能。エスモロールは手術中の上室性頻脈のみに保険適用。
副作用として低血圧、徐脈。
非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬
ヘルベッサー®, ジルチアゼム®(ジルチアゼム) 50mg/1A
ワソラン®(ベラパミル)5mg/2mL/1A
非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、血管平滑筋に働く末梢動脈血管拡張を起こすとともに、心臓への親和性があり洞房結節、房室結節の第0相の活動電位立ち上がりに関わるCa2+チャネル遮断により徐脈化し、陰性変時作用を起こす。また心室筋の第2相のプラトー期のCa2+チャネル遮断による脱分極持続時間短縮による陰性変力作用もある。
肝代謝であり、腎機能低下例でも使用可能。
術後はβ遮断薬またはCa拮抗薬を4~6週間継続するのが妥当。 3)
抗凝固療法は術後に考慮する
術中心房細動フローチャート
参考文献
1) Circulation. 2014 Dec 9;130(24):e278-333
2) Anesthesiology. 1998 Nov;89(5):1052-9
3) J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;148(3):e153. Epub 2014 Jun 30.
4) 心房細動治療(薬物)ガイドライン2013年改訂版
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