基準値:100~240 IU/L ※施設によって異なる
測定法:DMBT基質法
検査目的:肝合成能や栄養状態の評価、脂肪肝などの診断、有機リン中毒やコリン作動性クリーゼの診断など
コリンエステラーゼは、肝細胞で産生されるタンパクである。血清ChE活性の高値は肝細胞での産生の亢進による。産生は高栄養状態、蛋白合成や脂質代謝の亢進を反映すると考えられ、脂肪肝、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症での活性亢進の原因と考えられる。肝細胞間での高値は、癌での産生亢進、すなわち腫瘍随伴症候群と考えられる。
肝細胞では、ChE合成低下をきたす2つ病態として、肝疾患と低栄養状態がある。
急性重症感染症、悪性腫瘍、慢性消耗性疾患は低栄養状態が原因である。白血病治療薬の L アスパラギナーゼの肝障害でも低下する。
有機リン中毒での活性低下はChEの酵素活性自体への阻害による。ChE阻害薬として副交感神経刺激薬の臭化ジスチグミンやネオスチグミン(重症筋無力症の治療)があり、過量によってコリン作動性クリーゼとなることがある。
ハプトグロビン製剤には、ChEが混入しており、使用後コリンエステラーゼ値の上昇が見られる場合がある。
先天性血清ChE低下症・欠損症の患者では、コリンエステルの分解が遅く、筋弛緩薬や局所麻酔薬使用時に遷延性無呼吸をきたすので、この点でも血清ChE測定は大切である。
ChE(コリンエステラーゼ) | 考えられる病態・疾患 |
高値(上限以上) | [高頻度]脂肪肝, 糖尿病, ネフローゼ症候群, 甲状腺機能亢進症 [可能性]肥満, 本態性家族性高ChE血症, 肝細胞癌に伴う高ChE血症 |
低値(下限以下) | [高頻度]肝硬変, 肝細胞癌, 劇症肝炎, 慢性肝炎の急性増悪, 低栄養, 敗血症などの急性重症感染症, 各種の悪性腫瘍 [可能性]有機リン中毒, 各種の慢性消耗性疾患(膠原病, 粘液水腫, 下垂体・副腎不全症, 天疱瘡, うっ血性心不全, 潰瘍性大腸炎など), 副交感神経刺激薬(ChE阻害薬の使用), 遺伝性ChE異常症 |
参考文献
異常値の出るメカニズム
臨床検査データ
診断に自信がつく検査値の読み方教えます
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