静脈炎は血管内膜の炎症によっておこり、血流感染や血栓形成のリスクとなる。輸液に関する因子として浸透圧、pH、濃度がある。ここでは、薬剤による静脈炎リスクを取り上げる。
最大の要因は輸液の浸透圧であり、pHも要因となる。
■浸透圧
浸透圧の高い溶液が血管内に入ると、血管内皮細胞から血管内へ水分が移動し内皮細胞が縮小する。しかし、内皮細胞の縮小に対して、結合組織は縮小しないため、内皮細胞が剥離し静脈炎が生じる。
■pH
強酸性や強アルカリ性の薬剤を注入すると血管内皮損傷がおこりやすくなり、静脈炎のリスクが上昇する。
では、どの程度の浸透圧、pHで静脈炎リスクが上昇するのか。
■PH
血液の pH7.35 ~ 7.45 から解離する酸性やアルカリ性の輸液は静脈炎が起こりやすくなる
■浸透圧比(生理食塩水を1としたときの比率)
投与時間あたりの浸透圧比が高いと静脈炎がおこりやすくなる
※末梢静脈は浸透圧比3以下まで投与可
pH
浸透圧比
浸透圧比が高いほど静脈炎、血管痛がおこりやすい。ビーフリード輸液などはその代表格。
浸透圧比が高い製剤は、混合希釈によって比率を下げることで、血管痛を和らげるなどの工夫が出来る。
例えば、高浸透圧のビーフリードに低浸透圧のイントラリポスを混合することによって、浸透圧を低くすることが可能。ビーフリード500mL(浸透圧比3)とイントラリポス250mL(浸透圧比1)を混合すると浸透圧比は(500×3+250×1)÷750 =2.33となり、浸透圧比3よりも低くなるので、静脈炎発生リスクを軽減可能。
浸透圧比は添付文書に記載してある。
2. 製剤の性状
イントラポリス輸液10%/20% 添付文書
本剤は精製大豆油を主成分とする白色の乳濁した液で、わずかに粘性がある。
pH:6.5~8.5
浸透圧比:約1(生理食塩液に対する比)
参考文献
末梢静脈カテーテル留置期間と血流感染および静脈炎発生の関連性に関する検討.日本環境感染学会誌.29(2),2014,122-7
Lai, KK. Safety of prolonging peripheral cannula and i.v. tubing use from 72 hours to 96 hours. Am.
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現場がみえる輸液の知識と患者ケア
Becton, Dickinson and Company HP
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