Abstract
背景:孤立性の内側および膝蓋大腿関節関節炎の場合、人工膝関節全置換術(TKA)の代替術として、人工膝関節二顆置換術(BCA)がある。前向き無作為化試験で、BCAとTKAの臨床転帰を比較した。
方法:孤立性内側および膝蓋大腿骨変形性関節症の患者80人をBCAとTKAのどちらかに無作為に割り付けた。患者は術前、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、術後2年、5年後に評価された。Knee Society Score、Oxford Knee Score、University of California,Los Angelesの活動スコアが各経過観察時に算出され、Forgotten Joint Scoreは最終経過観察時に評価された。
結果:両群ともKnee Society Score、Oxford Knee Score、University of California,Los Angelesのスコアに改善が見られたが、いずれの追跡調査でも両群間に有意差は見られなかった。5年後のForgotten Joint Scoreにも有意差はなかった。可動域はBCA群で1年後以降の追跡調査で有意に増加した。
結論:本研究ではBCAとTKAの臨床スコアに有意差は認められなかった。BCAのROMのみが有意に増加した。したがって、失敗のリスクが高いBCAの複雑さを正当化できるのかは疑問である。機能の良いUKAが存在する場合の段階的膝蓋大腿関節形成術はBCAの選択肢であり、revision TKAの代替となるかもしれない。BCAの潜在的な利点を探るためには、長期的な研究が必要である。
対象患者の登録フローチャート
対象はKL分類4の変形性膝関節症患者。炎症性関節炎、手術歴あり、側副靭帯や十字靭帯の不安定性、外反変形、化膿性関節炎患者は除外。
BCA 40人、TKA 40人。
両群の人口統計学的特性、術前スコア
年齢、性別、BMIなど、BCA群とTKA群で人口統計学的特性は大きな違いなし。
両群間で術前のOKS、KSS、UCLAスコアの評価に有意な差は認められなかった。
術後スコア、ROM
両群ともすべての機能スコアに有意な改善がみられた。
いずれのフォローアップにおいても、両群間でKSS、OKS、UCLAスコアに有意差は認められなかった。
両群とも5年後のフォローアップまでは、ROMの増加が有意に認められた。
1年後以降のROMのみがBCA群で有意に大きかった。
手術時間は、TKA群(58.8±12.8分;P<0.05、Mann-Whitney U検定)に比べてBCA群(73.5±9.9分)の方が有意に長かった。
出血量は、BCA群(431±403mL)がTKA群(1064±504mL;P<0.05、t検定)に比べて有意に低かった。
今日のひとこと
BCAもTKAも術後機能スコアは改善するが、片方がぶっちぎりとなるデータは出ていない印象。
臨床スコアに大きな差は認められず、出血量が有意に減少し、ROMが有意に改善、程度のメリットでは、煩雑なBCAを積極的に導入するインセンティブは働かないか。
参考文献
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